
田邊さんの叩く“壺”の幻想的な音で「キャンドル」イントロが始まり、品川公演のスタートです。ステージ上のヤイコやメンバーの佇まい、シーンと静まり返った客席の空気、会場全体が独特の緊張感に包まれているのを感じます。息を飲む1曲目が終わり、続く「会いたい人」ではヤイコの華奢な体のどこから出ているんだろうと思うくらい、張りのある声が会場に響きました。

2曲終わったところで気になるメンバー紹介。これまで“合コン”チックにチャームポイントなどを織り交ぜていたメンバーでしたが、最終日の今回は自然とこのツアーの感想を言う場となりました。弦一徹さんは「今までの音楽家人生の中で幸せな時間を過ごせたと思います」、田邊さんは「すごく楽しかった。感謝の気持ちでいっぱいです」、ソルトさんは「ヤイコの楽曲を僕らが弾いてると実感できる内容になったと思う」と、普段はあまり口に出さないそれぞれの気持ちを告白。もちろんヤイコも「この素晴しい音楽家たちと一緒にツアーを回れたことが本当にうれしい」と、喜びを素直に表現しました。この時のMCでヤイコが言った「彼らが見事にいろんな世界を見せてくれました。すごく開放されたと思います」という言葉は、品川をはじめ各地で繰り広げられた彼らの音楽自体が何よりも証明してくれています。

その後も「この曲があったからこそ私は今日このステージに立てているんだと思う」という大切なデビュー曲「How?」をジャズアレンジで、現在もレコーディングを行っている8月15日(815で「ヤイコ」です)リリース予定のアルバムから「彼女の理由」を、ソルトさんの素晴しいピアノソロで始まる斬新なアレンジを施した「Not Still Over」、ステージ上の熱気が客席を包んだ「My Sweet Darlin'」など、新旧のラインナップを披露。トレイシー・チャップマンの楽曲をヤイコ自ら対訳した「Fast Car」では弦一徹さんがツアー中初めてバイオリンをトランペットに持ち替え、マンハッタンの夜景を彷佛とさせるようなグッと大人の「Fast Car」を聴かせてくれました。

リハーサル中にトランペットの調子を確認する弦一徹さん。本番での新鮮さを重視し、リハーサルでの音合わせは敢えて最小限となりました。それでも本番であれだけのムードを出せるのはさすがです!

本編最後の曲は「手と涙」。4人が生み出す音には15公演を共に過ごした充実感、信頼感、名残惜しさなどさまざまな心境が入り混じっているかのよう。声をどこまでも遠くへ羽ばたかせるヤイコ、体を大きく揺らしながら最高のバイオリンを奏でる弦一徹さん、懸命に下を向きカホンの低音を響かせる田邊さん、鍵盤を最大限に使ったダイナミックなピアノを弾くソルトさん。まさに4人の真骨頂とも言うべき見事な演奏で、本編を締めくくりました。
続くアンコールではヤイコひとりが登場。映画『ロボッツ』のエンディング曲として自ら書き下ろした、7月6日リリースの新曲「マワルソラ」を弾き語りで歌ったヤイコ。温かい手拍子に包まれながらのびのびと歌う姿が印象的でした。品川公演を、今ツアーを本当の意味で締めくくったのは「Life's like a love song」。ひとことひとこと、一音一音、噛み締めながら歌うヤイコの目にはうっすらと涙が浮かんでいるように見えたのは、気のせいでしょうか…。

「またこういう形でみんなとライブができたらと思っています」
アンコールでヤイコが言ったこの言葉、いつの日か必ず叶うと思います。そんな予感を感じながら、品川公演そして「矢井田瞳 acoustic live 2005 〜オトノシズク〜」ツアーは無事に幕を閉じました。

品川公演終了直後、ステージ裏で抱き合うヤイコたち。ツアー終了の充実感とお互いへの感謝の気持ちに包まれた温かい光景でした
::VOICE::

「『ヤイコかわいかった〜!』としか言いようがありません。生声が届く距離で見られてうれしかった。ヤイコの曲にいつも元気をもらっているので、ありがとうと言いたいです」(ゆかさん/左)
「ライブに来ること自体初めてだったんですけど、今日のライブすごかったです! 声がこっちに向かってくるのを肌で感じることができました」(ゆういちさん/右)

「超かっこよかった! 今日は4列目で見てたんですけど、ヤイコや他のメンバーの表情までよく見えたのがうれしかったです。音楽も本当に“生演奏”って感じ。またぜひヤイコのライブに来たいです」(まなみさん/左)
「大好きな『Life's like a love song』を生で聴けてよかったです。でもそれだけじゃなくて、言葉の全部に全部に気持ちがこもっているのを感じました」(つぐみさん/右)
::本日のヤイコITEM::

ヤイコが今ツアー中使っていたパーカッションセット。ヤイコが座るイスの横には小さなテーブルがあり、カシシ(「I'm here saying nothing」で使用)、ピアニカ(「マーブル色の日」で使用)、動物の爪でできたチャフチャス(「How?」で使用)が置かれていました。これ以外に田邊さんが作ってくれたというタンバリン(「How?」で使用)も。